令和7年度 富士総合火力演習

令和7年度 富士総合火力演習
Fire Power Exercise 2025 "Mt. Fuji"

「より実戦的な演習へ」
 6月8日、東富士演習場にて67回目を迎える富士総合火力演習が実施された。今年の昼間演習は、島嶼部への機動展開と進行阻止、水陸機動団による要点の確保、主力部隊による縦深に対する攻撃という構成であったが、これまでとは違い、前段演習の途中からシナリオに基づく構成であった。以下、本記事では、今年ならではの特徴に絞っていくつか紹介する。最初に紹介する大きな特徴は、前段演習の最後に、「将来装備品の展示・紹介」ということで、敵のミサイルなどの射程外の距離から発射できる「スタンド・オフ・ミサイル」である、12式地対艦誘導弾能力向上型(写真①)と島嶼防衛用高速滑空弾(写真②)、また、16式機動戦闘車の車体をベースに開発された、共通戦術装輪車の機動迫撃砲型と偵察戦闘型(写真③)がお披露目されたことである。これらは、防衛装備庁が過去に類を見ない速さで開発を進めてきた装備品であり、今回公開した背景には、中国に対する抑止力の狙いもある。
 航空機関連では、2022年から配備が開始されているUH-2多用途ヘリコプターがその機動性を生かした飛行を見せ(写真④)、第1空挺団の隊員が、CH-47JA大型ヘリコプターからの自由落下傘による降下を実施。航空自衛隊のF-2戦闘機は、訓練弾の投下を実施した。
 一方、地上において敵の侵攻を足止めする手段として、退役した203mm自走りゅう弾砲の砲弾を用いた爆弾や、火炎地帯の発動も公開された。
 また、ロシアによるウクライナ侵攻を教訓として、特科火力の重要性が説明されるとともに、普通科隊員が塹壕を制圧する様子が取り上げられ、その様子が会場のスクリーンで中継されるなど、実戦での知見の反映も確認できた。
 今回の昼間演習は、自衛官や学生への教育という本来の目的を活かしつつ、見せ方を工夫した内容となり、現在の陸上自衛隊が島嶼部でどのように作戦を実施するかを垣間見ることのできる、大変興味深い演習であった。

(表紙・特集)写真/文・桜川 航希氏 Xアカウント
フリーランスのミリタリーライター/カメラマン。